「家族」について

家族について友人が書いていたので、お薦めの一書を紹介しておきます。

近年の家族像の揺らぎに敏感に対応した一冊です。家族は家族であるがゆえに、多くの問題を内に抱え込み、どの家族でも個々のぶつかり合いが壮絶となる時期もあります。外に出ているときは社会人(社会的役割)や学生、生徒として求められる理想像に追われ、家族の中でも個人が常に批判にさらされたとしたら、人はいつか壊れてしまうでしょう。本書では、現代日本社会の家族についての知見を網羅的に考察し、「家族」概念の再検討を行っています。「人々の絆や信頼関係が、いまもっとも求められている今日的な課題である」という観点から、最終的に著者は、家族の条件をハンナ・アーレントペ・ヨンジュンの姿勢に求めていきます(この辺りがおもしろいです)。「暗い時代の問題性を、原理的には光の喪失ではなく、それを通じて光が公的領域に届くような人びとの間の空間が閉塞していたことである」と論じ、自由における消極的自由と積極的自由を踏まえた上で、「積極的自由」の必要性を説いています。その「積極的自由」を著者は「開かれた『家族』」、あるいは「自分の判断力を養うこと」と言い換えています。社会問題での極端な事例から、日常的な専業主婦、教育政策における「家族」像など、とても視野が広いです。ペ・ヨンジュンアーレントを結びつける所が著者の独特の魅力で、思わずラブリ〜とつぶやいてしまいました。喧嘩をしたり、暗い顔を見せる場所があるというのは、本当に幸せなことなのだと思います。もちろんそれは「友情」の中にも見出せることだと思います。